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都議会民主党:障害者差別禁止条例PT報告書

平成18(2006)年12月25日

 

                                              都議会民主党             
                                              障害者差別禁止条例PT
                                                座    長 初鹿明博
                                                 事務局長 小沢昌也

 

 1.条例制定の必要性

 

差別には、悪意による差別(故意=確信犯)と、無理解により当事者が差別と感じるケース(過失)がある。どちらの場合も、当事者は生きづらさを感じている。
悪質なケースについては、法的手段を講じ、司法の場で解決を図らなければならないが、多くの場合「知らない」ことから差別や障害者が差別されていると感じるケースが生じていると思われ、解決や未然防止につとめるためには、条例制定が必要である。

障害者施策の進展、施設から地域への取り組みが進むなか、地域で生活する障害者が増え、社会参加の機会も増えていくこととなる。こうしたことは、民主党としても積極的に推進している施策であり、これら施策の進展と、地域の問題調整能力の低下、人間関係の希薄化とがあいまって、現に生じており、また今後増加が懸念される軋轢に対しても、責任をもって対処するための方法を提示していかなければならないと考える。

人口に対して一定の割合で、障害をもって生まれる人がおり、障害を持たずに生まれても、事故や病気などでいつ障害を持つことになるかわからない。また、誰もが高齢になれば、視力や聴力、判断能力や身体能力が衰える。
障害のある人もない人も、ともに理解しあい、互いの暮らしにくさに配慮し合って生きられるようにしていくことは、障害者やその家族だけの問題ではなく、すべての人に関係のある、自分たちの問題として考えてもらうことが必要である。

 

2.条例の性格

 

 

○罰するのではなく、問題解決を仲介する
千葉県の「障害者差別をなくすための研究会」座長を務めた野沢氏を招いて話を伺った。その際、一般市民、障害当事者の委員による議論の末、差別者を罰するためのものにすべきでない、罰則では関係が悪化する場合が多いとの結論に至ったとのことであった。
地域で暮らすなかでの具体的事例を交え、徐々に関係を作り、障害のある人もない人も、互いをわかりあうことの必要性、調整機能の必要性と有効性について伺い、認識を深めることができた。
これ以前から、PT内には、差別をなくすというよりは、差別の原因をなくす、つまり、理解しあうことが必要ではないか、との共通認識があった。
また、各回のPTでは、障害者とともに暮らす社会を基本とし、理解しあい、差別をなくすためには、行政がどのような役割を果たすべきか、PTメンバーが地域で係わった具体的事例も交え、真剣な議論が行われた。
その結果、ともに暮らす当事者同士が関係を作り、コミュニケートすることが必要であり、差別する(差別されたと思わせた)人を行政がどうにかするのではなく、当事者同士が解決できる仕組みを作ることが、公に求められる役割であるとの結論に達した。
尚、条例の名称については、目的を端的に表現できるものとすることが望ましいため、「差別禁止」を用いるかどうかも含め、今後の検討課題とする。

 

「条例の主たる目的」


    ?問題が生じた場合、当事者同士が主観でぶつかり合うのではなく、互いを理解しあうため、第三者が調整に入ることが必要であることから、その仕組みづくり。
    ?多くの場合差別(差別と感じること)の原因となっている、「知らない」をなくし、相互理解を進めること。

 

 知的障害者作業所の例

住宅街の中に作業所が出来た。利用者が大声を出すため、近隣住民が、「うるさい!いい加減にしてくれ!」と乗り込んでた。
住民は、小柄な所長が、汗をかきながら、利用者の世話をする様子を見て「なぜうるさいのか、わかった」と、立ち去った。
その話を聞いた自治会長は、それほどひどい騒音ではないのに、なぜ住民が作業所を忌避するのか、よく知らないからではないか、と考えた。
そこで、自ら仲介役となり、利用者をお祭りに連れて行ったり、自治会報に掲載。
良き仲介役を得たことで、住民の意識が変化、今では障害者が自治会費の集金係を引き受けるなど、自治会の一員となって活動している。

 

 

3.条例案作成上の課題

 

 

○条例案の内容について

障害の定義:障害3法に定める障害である、身体・知的・精神障害のみを障害とするのか、社会との関係性において生じる不利益に着目する社会モデル※とするのかについて、より詳細に検討し、条例案に定義することが必要。

  • 社会モデルを採用すれば、現行法の対象とならない、発達障害者や高次脳機能障害、難病患者も対象とできる。
  • 一方、国の将来的な施策展開として、がん、難病、事故など原因を問わずに支援サービスを提供する体制構築が見込まれている。障害者自立支援法においても、「障害者の範囲については、3年後の見直しまでに検討する」と明記されている。
  • よって、現行法の障害定義に課題があり、改善の必要があるという点には、社会的な共通認識があるものといってよく、都の条例において、社会モデルを採用する意義は高いと思われる。
  • また、PTでは、より広義に定義して、日常生活における不利益を考慮し、日本語コミュニケーション能力が不足する外国人等への差別解消・支援も含める方向性についても意見が出された。
  • 条例案全体の構成に係わることであり、具体的な案文づくりを進める中で、判断する必要がある。

        
         ※社会モデル:WHOが採用している障害分類。障害は、個人の状態ではなく、社会環境との相互作用から発生する。という考え方。 

 

  差別の定義:条例の主たる目的を、問題解決のための調整機能と、差別をなくす取り組み、とする場合、それが誤解であれば誤解を解くことも含まれることから、厳格な定義は必要としない。また、罪を規定しないことから、技術的にも、構成要件を厳格に定める必要はないものと考える。

 

  • 何が差別になるのかは個々のケースにより異なり、人それぞれ差別だと思うレベルが違うため、条例で定形化するのは困難。問題解決に取り組むためのガイドラインは必要。
  • 差別の原因はたいてい「知らない」ことだが、都民全員が個別の事情を把握することはできないため、ある程度のガイドラインとなるものがあれば良い、差別をするつもりはないが、わからないからしている事もある。
  • とすれば、一本の線を引いて、ここからが差別だ、と決めるのは難しいし、事態の改善にはつながらない危険性が高い。
  • 条例の目的を達するためには、権利?義務関係で何かを強制する、懲罰的な性格ではなく、関係構築を支援する仕組みが機能することを第一と考えるべき。そのためには、被差別者の主観に基づくとしても、一旦は引き受け、差別者、被差別者双方の調整を行うことで解決・改善を図ることが有効。

 

関係機関が多岐にわたる:医療・福祉・労働・教育、さまざまな関係機関の理解と協力が必要である。条例の主旨と有効性について十分な理解を得、多くの関係者に意見を出してもらう必要がある。


  意識の醸成:条例制定に関する都民一般の意識、関係者の意識を醸成する必要がある。この条例によって何をしようとしているのか、明確で強いメッセージを発信し、制定機運を高めることが必要。 

 

  用語・表記:「障害」の語は、他の適切な表現が望ましいとの意見が出された(ハンディキャッパー、チャレンジド、ギフティッドパーソンなどがある)。また、表記に「障がい」とひらがなを用いる提案もあった。更に、言葉狩りをしてもしょうがないとの意見もあった。条例で用いる言葉の問題であり、当事者を含めた広範な議論に基づく合意形成が必要である。


4.条例制定のために必要なこと

 

・対外的な働きかけ

 

  • 各地域でのタウンミーティング実施など、当事者・地域の人(商売をしている人)などいろいろな立場の人が、話し合うことが必要。世論の盛り上げ、多岐にわたる関係者を巻き込んで、作らないという選択肢がない状況を作る。
  • PTでは、都議会民主党または都連などで、継続的に取り組む方法を採れないか、との意見が出た。
  • 本報告書を条例案にする中で、またその後、条例化する過程で、東京における差別事例の収集や検討を行い、現在は個々に活動している当事者団体、ある面では当事者と対峙する関係にある行政・事業者などとともに、話し合い、互いを理解し合う機運を高めるため、積極的に活動することに意義があるのではないか。


                                                              以 上

 

 


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